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アーティスト


これはいつ撮った写真だろう?
とにかく2000年より前なのは確かなのだが、あいにくメモが見当たらない。
ただ、この写真を撮るのがいかに大変だったのかということは、まだ記憶に新しい。

ロシアにも何度か足を運んでいて、少しロシア語も話せるようになってきた頃だった。
季節は?
これも余り記憶にない。

「あそこ、散歩していて変なところあったよね?線路の側で。どこだったっけ?
もう一度行って写真でもと思ったんだけど。」

「あー、あそこね。道の名前書いておくから聞きながら行ってね。」

みたいなことだったと思う。

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なぜか時間だけ覚えている。夕方の8時頃でまだ日が幾分あった(ということは夏だ)。線路沿いのながーい道に延々とガレージのようなものが建っていて、人通りも少なく一人で歩くのにはちょっと気の引けるようなところだった。

案の定、てくてくカメラ片手に歩いているとガレージの前で作業している数人に「ひゅーひゅー」言われたりもした。やれやれ、と思いながら彼らをやり過ごしてカメラを向ける。

アーティスト_a0087352_335212.jpg


アーティスト_a0087352_3343658.jpg


何の意味もないガレージなのに、何かに惹かれたのを覚えている。
そうでなきゃ、こんな辺鄙なところにわざわざ一人で戻ってきたりしない。

ところが、すぐにそれを後悔することになる。

アーティスト_a0087352_339071.jpg


ふいに背後から声がしたのだ。
「ちょっとお嬢さん、ここで一体何をしているんだ?」

後ろを振り向くとそこにはなんと3人の警官がいるではないか。
「写真を撮っているのですが。」
と答えるが、彼らはこういうではないか。
「ちょっとそこの車へ来てもらおうか。カメラを渡しなさい。」
これはマズい。カメラだけでも取り返さねば。
「パスポートを見せなさい。鞄も渡しなさい。」
ドイツではあり得ないことだが、ロシアではこのような警官の取り調べは日常茶飯事である。ただ、車に乗せられて身ぐるみ剥がされたのは勿論これが初めてである。

ヤバイ。

どこに連れて行かれるのかも分からず、とにかく冷静になって様子を伺うしかない、と腹をくくることにする。

そんなこちらの気も知らず、わざと携帯している銃をがちゃんと脇に置いてみせたりする。これは怖がったら負けだと。
「ちょっとすみませんが、ベルリンから来た観光客、いえアーティスト(観光客よりカメラマンの方がこの状況では恐らく自然に聞こえる)であそこの写真を撮っていただけなのにこれはどういうことなんでしょうか?」と聞いてみる。

「いや、スパイだろう。あんなところで写真なんて撮る意味がない。」
「(スパイって・・・)だからアーティストだって言ってるじゃないですか。カメラだけは返して下さい。日本大使館の知人に連絡しますよ(勿論、知人なんていないのである)。」
「君、モスクワのどこに住んでいるんだ?え、ベルリンから来たのか。ロシア人の彼氏でもモスクワにいるのか?」

(ん?なんだこの質問は?もしかしてヒマつぶしか、これは??)

「ええ、まあ。まだ結婚はしてませんけどね。」
「君、名前は?僕はアンドレイ。」

(やっぱり・・・これじゃナンパじゃないか・・・)

とまあ、こんなわけで何とか暇な彼らの気を紛らわそうと、調子良く話しに乗ることにする。それ以外、助かる道もなさそうである。15分くらいして着いた先はしかし、警察署。しかも建物の中に入ると20人くらいわさわさ警官がいるではないか。

私のカメラや鞄をあーだこーだ言いながら、ひっかき回している。

さすがにそこで、堪忍袋の緒が切れた。
「何でも良いけど、カメラだけは返してもらわないと困るんですが!」
そして自分でも驚いたことに、なぜかここだけドイツ語で怒鳴っていたのだった。

これがしかし効果アリ。
それを聞きつけた上司らしき人物が奥から顔を出し、3人の警官に向かって「もう彼女を帰してやれ。」と一言。

全ての所持品を取り戻し、緊張が解れたせいでふらふらになって外へ出た。

「それで君、全部返してもらったの?」と別の警官。
「ええ・・・」
「それは君ラッキーだったね。メトロまで乗せて行ってあげようか?」
「・・・いえ、結構です。(ニィエット、スパシーバ。)」

ラッキ−って一体なんなんだ。
もう頼むから放っておいてくれないかな。

もっと呆れたのは、この話を這々の体で帰ってから報告した時だった。

「〜って、こんなことがあったんだけど。」

「ハハハハ!それは面白いことがあったんだね!」

まーったく、心配なんてしてくれないのだ。
しかもそれをうれしそーに友人に電話で話しているではないか。

だめだ、完全にマヒしてるよ、モスクヴィッチは。

と、その時は呆れ返るほかなかった。
身ぐるみ剥がれていた可能性もあったわけで、無事に帰還したのだからもっと労ってほしかったのだ。「それは大変だったね!無事に帰れて良かったね!」とかなんとか。

これは今思い出してみてもかなりトホホな話である。


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by zaichik49 | 2008-07-27 04:15 | モスクワ


ベルリン在住、ベルリナーによるモスクワ体験記も一段落。今後も気になるロシアや現在のベルリン生活の中で想うことをつらつら書いていこうと思います。


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2009年9月29日に長女を出産しました。タグの「妊娠」にて妊娠覚え書きをまとめてみましたので、また覗いて見てください。

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