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Kunsthalle ハンブルク/その2


前回はドイツロマン主義の画家、Otto Phillip Rungeについて「朝」という作品を中心に書いたが、今回はCasper David Friedrichについて触れてみようと思う。

Casper David Friedrichにとって「孤独」こそが創造の前提であった。
この画家の描き出す風景は彼自身の内なる感覚に従ったものだという。
Casper David Friedrichはそのことについてこう述べている。

Schliess dein leibliches Auge, damit du mit dem geistigen Auge zuerst siehst dein Bild. Dann foerdere zutage, was du im Dunkeln gesehen, dass es zurueckwirke auf andere von aussen nach innen.

君の肉眼を閉じよ、そうすることによって精神の目で君の絵を見る事が出来るように。
そして君が暗闇で見た物を明るみに出すのだ。それは他の者(絵を見る者)を外から内へと向かわせるだろう。


Friedrichはまた、風景画における新しい構成上の原理を持ち込んだ。彼は画面に平行な層を重ね、遠近感のある奥行きのある空間を避けた。逆に対称的な画面分割と縦と横の軸によって画面を強調したのである。
未完成のDas brennende Neubrandenburgには定規で引いた構成上のラインがはっきりと見て取れる。

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Casper David Friedrich 1774-1840
Das brennende Neubrandenburg / Neubrandenburg in Flames um 1834

個人的に彼の絵で一番印象に残っているのは、まさに「孤高の人」という印象を受ける次の作品である。

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Casper David Friedrich 1774-1840
Wanderer ueber dem Nebelmeer / Wanderer Overlooking the Sea of Fog um 1817

この絵の中で、人間は超越した自然景観の目撃者となる。背を向けた人物によって、 Friedrichは見る者を絵の中の人物に置き換えようとする。
旅人の視線は足を踏み入れる事の出来ない、永遠の空間へと開かれる。
孤独な人間と超自然との対面を Friedrichは山頂での体験、存在の危うさと死の予感に共鳴する考えと結びつけるのである。

どうも、この手の主題や独特の静けさといったものが、初めてこの絵を知った時に、自分の中のドイツのイメージとぴったり重なった記憶がある。

今回、初めて見た絵の中でも特に印象の強かったものはこちら。

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Casper David Friedrich 1774-1840
Das Eismeer / The Ice Sea, 1823/24

これは1819年から20年にかけてWilliam Edward Parryによる極地探検での事故をもとに、人類の破滅と自然の悲劇を描いたものだという。

そして最後にこちら。「月光の中の海岸」。

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Meeresufer im Mondschein, 1835/6

1815年以降、Friedrichは月明かりの風景と難破船のアレゴリーを多く描いており、この絵はその完成型と言える。彼が卒中の発作から回復した後に、最後に完成させることの出来た作品がこれに当たる。

絵の中の無の空間は極端に増え、薄明の中でほとんど見えない絵のモチーフ(人生と希望のシンボルである船と錨)がほぼ対称に何もない空間の中心に置かれている。そしてそこに、月明かりが途切れ途切れに落ちている。

現在、彼の絵画の中でも特に重要視されているこの絵は、描かれた当時は同時代人から「事実ではない」とか「美しくない」と多くの不評を買ったそうだ。

Friedrichはここで作品を対象から自由にし、表現の自律性にまで高めた極度に緊張感のある色彩作用、彩色に到達したのである。

ところで、この先週のハンブルク、ベルリンの零下二桁には及ばずの寒さだったが、エルベ川はすっかり凍っていた。

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本文:Jennes E. Howoldt: Der maler im Atlier@Hamburger Kunsthalle参照

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by zaichik49 | 2009-01-25 05:52 | アート

Kunsthalle ハンブルク/その1


今年の初仕事はハンブルクでの取材だった。
先にスイスでのロケを終えた取材チームとハンブルクで合流。
ところが、スイスの寒さのためかディレクター氏、カメラマンとも体調がかなり悪く2日目にダウン。
あいにく、その日はロケの予定がなかったためフリーということに。

まず、お昼にドイツ人の同僚とこれまでに行きそびれていたポルトガル料理のお店へ。
ポルトガルやスペイン料理のお店が集まっている港沿いにあるSagresというお店で、本場の味が楽しめ、しかもリーズナブル。

お腹も一杯になったので、去年帰国した際、東京で寺門さんと久しぶりにお会い出来た際に話題に上ったOtto Phillip RungeのDer Morgen(朝)を一目見ようと中央駅の並びにあるKunsthalleへ。

目指すは「19世紀絵画」。Otto Phillip RungeはCasper David Friedrichと並ぶ重要なドイツロマン主義の画家だそうだが、後者はベルリン美術館の旧美術館内で観た際に印象に残っていたものの、前者のOtto Phillip Rungeの絵画については全く知らなかったというのが正直なところ。

「ロマン主義」については以下、ウィキペディアからの抜粋をご参考までに。

主として18世紀末から19世紀にかけての運動であり、その影響はヨーロッパ全域に広まり、世紀末から20世紀の初めころの後期ロマン主義にまで及んだ。

ロマン主義の底流に流れているものは、内面性の重視、感情の尊重、想像性の開放といった特性であり、好まれる主題としては、「異国的なもの」「未知のもの」「隠れたもの」「はるかなるもの(特に、自分たちの文化の精神的な故郷、古代文化)」「神秘的なもの(言葉で語れないもの)」「夢と現実の混交」、更には、「憂鬱」「不安」「動揺」「苦悩」「自然愛」などを挙げることができる。


Casper David Friedrichが風景の画家だとすれば、Otto Phillip Rungeは人物描写、特に子供の肖像画が素晴らしい画家である。

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Otto Phillip Runge 1777-1810
Der Morgen (erste Fasung) 1808 / Morning (First Version) 1808

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Otto Phillip Runge 1777-1810
Der Morgen (zweite Fassung) 1808/09 / Morning (Second Version) 1808/09

第一印象としては宗教画のように見えたこと、そしてその色使いとディテールの素晴らしさである。ざっと経歴を読んだところ、この画家は初めて三次元の色彩の体系を作り出した人でもあるらしい。また、風景を巨大な神聖文字(ヒエログリフ)、つまり隠喩や象徴として描くという構想を生み出し、その作品化されたものが、たとえば、上の写真の「朝」についての二つの作品だということである。次の「愛の勝利」も気になった作品。

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Otto Phillip Runge 1777-1810
Triumph des Amor / Triumph of Love (Amor) 1801

ドイツの美術館・博物館のほとんどは一部特別展を除き、フラッシュを炊かなければ写真撮影が出来る所がほとんどで、それはこのKunsthalleでも同じだった。

さて、対する風景画家としてのCasper David Friedrichの作品も大きめの展示室で観る事ができた。特別展ではMax Ernstが1934年にパリで出版したコラージュ小説“Une semaine de bonté” (“A Week of Kindness”)を観る事ができた。最終日だったのでドイツの美術館にしては珍しく混んでいたが。

Casper David Friedrichについては次回に少し触れたいと思う。

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by zaichik49 | 2009-01-19 00:11 | アート


ベルリン在住、ベルリナーによるモスクワ体験記も一段落。今後も気になるロシアや現在のベルリン生活の中で想うことをつらつら書いていこうと思います。


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2009年9月29日に長女を出産しました。タグの「妊娠」にて妊娠覚え書きをまとめてみましたので、また覗いて見てください。

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